医学部不正入試の話題が結構盛り上がっていますよね。
これについて思うところを書いていきたいと思います。
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医学部不正入試とは
医学部不正入試問題とはwikipediaによると
「2018年における医学部不正入試問題とは、2018年発覚した問題で、日本の医学部が入学試験において得点を操作し、現役生、男子生徒、学校関係者の子弟を優遇的に合格させていた一連の問題である。」
だそうです。
現役(年齢)、男子生徒(性別)、学校関係者の子弟、これに加えて「地元」を加えて論じたいと思います。
かつては(恐らく)地方国立医学部を中心に地元出身の受験生を優遇していました。
2018年現在の大きな差別要因ではありませんが、かつてかなり横行していたと思われます。
まず前提として
大前提として、事情が理解できることと不正であることは別の話です。
ですが、不正が必ずしも悪ではないことも予め断っておきます。
医学部不正入試問題の根が深いのは
大学側には大学側の正義がある
ことです。
個別に見ていきましょう。
学校関係者の親族を優遇
これは完全にアウトでしょう。犯罪行為ですので逮捕されて然るべきかと思います。
私立の医学部であっても国の税金が使われて医師を育てます。
これの私物化は許されるべきでありません。刑事犯罪として裁かれるべきです。
これ以上言うことはありません。
胸糞悪いですね!
性差別について
男子生徒が優遇されているという話がありました。
これは非常に難しい問題を孕んでいます。
「2016年の厚生労働省の調査では女医は全体の21.1%を占めるのに対し、診療科では皮膚科47.5%、眼科38.3%と一部の診療科に集中し、外科では5.5%と少ないため、女医が多くなれば外科手術を行う人員が確保できない」
という意見がありましたが、実際その通りです。
また、女医が外科系に進んだとしても産休育休で穴を空けたり、深夜まで残業できないという問題もあります。
いや言ってることおかしいですけどね!
深夜まで残業させる方がおかしいのは百も承知です。
でも日本の医療制度ではやむを得ません。
主治医制なので深夜でも休日でも患者が急変したら駆けつけるのが筋とされているのです。
特に外科医の場合は患者もしょっちゅう急変しますし、急変した場合、執刀医でないと分からないことも多いでしょう。もしかしたら緊急再手術にもなるわけですから、他科以上に、主治医が駆けつけないといけないのです。
女性の方がこれが出来ない先生が多いんですね。
なんて偉そうなことを言ってますが、私はとてもそんなことは出来ないと外科系は敬遠しました。
さて、こういう事情を考慮したとして、男子受験生を優遇するのは不正でしょうか?
明確に不正です。
先に触れましたが、事情が理解できることと不正かどうかは別の話です。
ですがすべての不正が悪ではないとも言えます。
私は男女差別に関しては悪でもあると考えています。
産休や育休で穴を空ける可能性があるのは、どんな職種でも同じです。
それでも男女雇用機会均等法があるように、男女差別は不正であり、他の職種で呑んでいる条件を医師だけ例外として適応しない理由はありません。
(同様に医師だからという理由で労働基準法を適応しない考えにも反対です。)
ちなみに、医学部受験科目に物理があるのは何故?と思う受験生もいるかも知れません。
御察しの通り不正を行わずに男子生徒を優遇する手段の一つであると思います。
理系科目は男性の方が得意な傾向にあるのは事実ですから。
これは規則を破っていないので不正ではないでしょう。
不正を行わずに男女差別をする、謂わば「脱法差別」のような方法は悪でしょうか。
私はそう思いません。
医師の仕事が男性向きであることも事実です。
男性向きの科目が採用されているくらいで音をあげている場合ではありません。
後に述べる「文句ない高得点」も必要ありません。
合格点を取れば合格できるのですから頑張りましょう。
年齢差別について
これも話題になりました。
ただしこれは昔裁判になったことがあります。
今まで明らかになった不正入試の傾向から、不正は私立医学部で行われていると思う方もいるでしょうが、群馬大学は合格点を取ったはずなのに不合格となった再受験生に裁判を起こされています。
私個人の見解を勿体ぶらずに語ると、
年齢差別は少なくとも男女差別よりは白っぽいグレー
です。
なぜなら、年齢差別で不合格になっている事例は多くの場合、面接試験や小論文で減点されて不合格になっているからです。
面接や小論文ですよ?これは人間力を見ますということです。
30歳と18歳が同じレベルの小論文を書いて同じ点数なわけないでしょう?
同様に面接試験で30歳が18歳と変わらない受け答えをして同じ点数になるはずがありません。
歳相応の中身が求められます。
でも、歳相応って?
もちろん答えなんてありません。歳相応とは時代、国、文化によっても違いますからね。
男女差別でもそうですが、「受験要項に載っていない基準で判定する」ことが不正なのです。
(男女差別は受験要項に載せても不正でしょうけど。)
面接や小論文が点数化されている大学は
「年齢差別するから再受験生は文句ないくらい高得点取ってください。」と要項にかいているようなものです。
だから不正かどうかという視点でグレーだと思います。
裁判でも再受験生が負けました。
悪かどうかという点でもグレーでしょう。
そもそも不正かどうかがグレーだからです。
ただ私は、18歳と同様の基準でいいと思っている人に医者になって欲しくはないですね。
文句ない高得点を叩き出すために努力するべきです。
地元優遇について
これは現在はかなり減っていると聞きます。
だから医学部不正入試問題でも話題に挙がっていませんね。不思議です。
私が受験生の頃には横行していましたよ(怒
これは地方の国立医学部が地元出身者を優遇していたものです。かつてはかなり横行していたと思います。
近年は地域枠というものが設立され、合法的に地元の受験生を優遇できるようになったため、一般入試で不正を働いてまで地元を優遇するケースが減った、という背景があるため、現在の受験生がそこまで神経質になるものではないかも知れませんね。
ただ、不正入試問題を語るなら避けて通れないでしょう。
地域枠とは地元出身者の枠であったり、卒後その地方で○年勤務が義務付けられている枠ですね。
かつては地域枠が今のように当たり前に存在していませんでした。
でも、医師の偏在は今も昔も深刻な問題です。
地方の国立医学部にはその土地の医療を支えるという使命があります。
で、何をするかというと、地元出身者の優遇です。
地元出身者だからといって卒業後地元で働くとは限らないのですが、東京出身で医科歯科には受からないけど地方国立ならばと言って受けに来る受験生よりは卒後も残る確率が高いでしょう。
これは不正でしょうか。
明確に不正であると考えます。
不正でないとする根拠があるとすれば年齢差別と同じです。
面接や小論文で地元を優遇していたのです。
これは年齢問題と違い、地元学生を優遇して良い理由はないでしょう。
男女差別と同様、要項に書いていない項目で不当に減点していたと言えるでしょう。
ではこれは悪だったのか。
私は悪ではなかったと考えます。
私自身は首都圏出身ですので地方国立を受験する場合は不利になる立場でしたし、受験生のころは憤慨したこともあったのですが、
地方国立医学部の使命の一つに地元の医療を支えるというものがあります。
この使命は国立医学部が勝手にそう思っているのではなく、国が決めていることです。
ですから、地元優遇を断罪することはダブルスタンダードです。
「地元の医療を支えろ。」「公平に入試を実施しろ。」と同時に言うのは無理なのです。
地方国立には地方国立の正義があり、その正義は国民にとって必要であり、しかも国の方針で決められていることです。
そんな「不正だけど悪ではない」という複雑な時代がありました。
「不正だけど悪ではない」場合は制度を変えるしかありません。
そして今では地元枠が存在します。
このジレンマは一応解決した(少なくともずっとマシになった)と言えるでしょう。
まとめ
親族優遇は論外です。親族以外誰の為にもならないだけでなく国税を使った医学教育を私物化することは刑事犯罪として裁かれるべきだと思います。
男女差別、年齢差別に関しては事情に一定の説得力があります。
ですからこれらは不正にならないように制度を変えるべきだと思います。
ただし女性差別に関しては数学と物理の試験を課している今の時点で十分であると思います。
年齢差別に関して面接と小論文で年齢相応を求める今の制度は完全な間違いと思いませんが、不透明で不信感を抱かせてしまうことは問題であると思います。
防衛医大なんて20歳までしか受験できませんが、基準が明確だから年齢差別だと騒ぐ人は少ないですね。
このような基準を各大学が設けることがいいのではないかと思います。
地元優遇と同じです。
不平等でも正義です。
公表して世間の理解を得られるラインが難しかったのでしょうが、今後は公表しないことの理解を得る方が難しくなるでしょう。
国主導で丁度良いラインを探る必要がありますね。
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