“理系のセンス”というものが存在します。これは否定できません。
否定する大人は信用しないでください。
良ければ大学受験とセンスの関係という記事をお読みください。
センスというのは確かに存在するのですが、様々な要因が組み合わさってセンス(感覚)なので、掴みどころがないんですね。
ただ、“理系センス”の要因は幾つかに分類することは可能と思います。
1.計算力
2.理解力(インプット能力)
3.応用力(アウトプット能力)
4.空間認識能力
こんなところではないでしょうか。
計算力に関しては大学受験の計算力の記事をお読みください。
ちなみに私は大学受験では計算力が一番重要だと思います。
なぜなら、上の4要素のうち最も鍛えやすいうえに本番で確実に点数に直結するからです。
計算力は速さと正確さ、文字計算と数値計算、これらを鍛える必要があります。
さて、この記事ですが、4要素で言うと、アウトプットとインプットに関わるものです。
ただし、付け焼き刃でどうにかなるものではありません。
日頃の勉強の仕方のヒントになればと思います。
理系の頭の良い人が時々使う言葉があります。
定性的・定量的です。
化学の勉強が進んでいれば、無機で定性分析というのを聞いたことがあるかも知れません。
これの意味が分かるようになります。
定性的にみないと駄目なもの、定量的にみないと駄目なものというものがありますが、
これらを超越して、どちらでもいけるものを両方を使って考えるクセをつけるのが目標です。
難しそうですか?
頑張ってついてきてください。
定性的を辞書で引いてみましょう。
「対象の状態を不連続な性質の変化に着目してとらえること。」
とあります。難しそうですね。不連続とか。微積かよみたいな。
でもこれは化学の定性分析と同じです。
水酸化ナトリウムを加えたら沈殿した、とか色が変わったとか、気体が発生したとか。
そういうことです。
つまり何グラム加えたら何グラム沈殿したとか、何グラム増えたとか、pHがいくつ変わったとかじゃないんです。
後者は定量的に見ています。
具体例を挙げましょう。
センター物理で満点を目指す勉強法という記事で紹介したのと同じ問題です。
2009年の問題ですが、
こんな問題がありました。
手回し発電機を回すのにどれが一番大変かという問題です。
これ、物理の苦手な人は「大きい抵抗に電流を流そうとするの大変そうじゃん?」
などと言うわけですが…
これは定性的、定量的の両方から検討できる良問です。
Contents
定性的に見ると、
同じ電圧になるように回したとき、明らかにbはショートしますよね。
ショートするということは火花が出るじゃないですか。
その火花のエネルギーは天から降ってくるんですか?
違いますね。エネルギー保存の法則です。
回した人の汗と涙の結晶が火花になるんです。
さて、cの場合はどうでしょう。
うんともすんとも言わないのでないですか?
だから一番軽いのです。だってcを回すのが大変だったとしたら、そのエネルギーはどこに消えたんですか?
ちなみに物理の衝突の問題で完全弾性衝突(単に弾性衝突というのと同じ意味です)すると
運動エネルギーは保存されますね。だから衝突しても音は鳴ってないはずです。(音エネルギーがどこから来るんですか?となる)
そして、完全非弾性衝突の場合、運動量は保存されますが、運動エネルギーは全然保存されませんね。
つまりエネルギー保存の法則から考えて、音エネルギーや熱エネルギーに変換されているはずなのです。
そう考えると絶縁体に電池を繋いでも大きな音や熱は発生しないでしょう?
モーターを回したエネルギーが何にも変換されずに消えてしまったことになります。
こんなのが定性的な見方です。計算してないでしょう。
定量的に見るとどうなるでしょう。
電池のする仕事はIVでしたね。電池が手回しになっただけです。
Vが一定になるように回しているのですから、Iが大きいと仕事が増えるのです。
…と、要領よく考えてもいいし、
「抵抗の発熱はRI2だったな。あれ、Rを大きくしたらIが小さくなるし、結局どれが一番発熱するんだ??」
なんてハマってしまったら、V=IR⇔I=V/Rを代入してRI2=V2/Rにしてしまえば良いのです。
やはりVは一定ですからRが小さくなると大変なのです。
これが定量的に見るということです。
数学、物理、化学では、二次試験も含めてこういう定性定量が両輪になって思考力になっていて、
どちらか片方だけ偏差値70とはいかないものです。
両方をバランス良く磨く必要があります。
これらを意識して普段から学習することです。
すると本番であれっとなったときに、落ち着いて考えられます。
今定量的にみたけど、何か嫌な予感がするなと。
定性的に見て何か矛盾はないかなと考えるのです。
以上、大学受験で理系センスを磨こう!〜定性的・定量的とは?〜 でした。
物理学は諸法則を数式、つまり数学で表現しています。
たとえばニュートンの重力の数式は、
F=G・Mm/r^2
です。Gは万有引力定数で宇宙のどこでも一定の値です。
この数式を定性的に考えれば「重力は2つの物体それぞれの質量に比例し、2つの物体の距離の2乗に反比例する」つまり物体の質量が大きいほど強くなり、距離が離れれば弱くなるということです。数式が表す意味を理解することが定性的理解です。
これに対し定量的理解は、実際にG、M、m、rの値から重力Fを計算することです。
大学入庫では重力Fを計算するような簡単な問題は出題されず、惑星の楕円軌道や非同期彗星の軌道を計算させるといった問題が出題されるでしょうが、これらは定性的理解があってこそ回答することができるものと思います。